国連安保理の不名誉な日:
制裁決議は北朝鮮を荒廃させ、人道危機を誘発する
 
2017年12月22日安保理決議2397:安保理は北朝鮮にゲシュタポ式の制裁を課す。制裁は北朝鮮の人々を絶滅させるという警告にもかかわらず。
 
Carla Stea
 
グルーバル・リサーチ2017.6.12.28
 
 
 
 
 
 
 
 
以前の北朝鮮への制裁が、北朝鮮人民を荒廃させる人道危機を、特に最も傷つきやすい人々に対して引き起こしているという数多くの証言を無視して、12月22日、人々に破滅的影響をもたらすという警告にもかかわらず、国連安保理事会は厳しく非人道的な一連の新たな制裁決議を可決した。それはヒトラーのニュールンベルグ法(訳注1)にも比較されるに違いない。
(訳注1)ニュルンベルク法は、1935年9月15日に国家社会主義ドイツ労働者党(以下ナチ党)政権下のドイツにおいて制定された2つの法律「ドイツ人の血と名誉を守るための法律」と「帝国市民法」の総称である。ユダヤ人から公民権を奪い取った法律として悪名高い。<ウィキペディア>
 
典型的な裏切り行為として、賛成投票をしたこれらの安保理外交官たちは、以前の制裁が与えた人道的苦悩に対する無知をさらけだした。そしてこれら新たな制裁への賛成投票が必然的にもたらす人道的苦悩に対して理不尽にも無関心である。
 
これらの制裁は、北朝鮮の社会主義経済システムを崩壊させるために、挑発することが狙いである。しかしなぜ中国とロシアがこれらの制裁に拒否権を発動しなかったかという究極的な問題が残されている。二つの国はこの破局を阻止する力を持っているのに。どんな「話し合い」がなされたのか。アメリカ・ジャガーノート(訳注2)はロシアと中国の近視眼的屈服を引き出すのに成功した。それはユーラシア大陸を完全に不安定化させ、アメリカの永久的軍事配備を可能にし、おそらく核戦争をも引き起こしかねない。確かにロシアが思い起こさねばならないのは、ゴルバチョフが、ソ連がドイツの再統合に合意する見返りとして、アメリカ国務長官ジェイムズ・米カーによって保証されたことだ。
 
つまり「NATOはベルリンの東に1インチたりとも拡大しない」と。
(訳注2)インド神話:Vishnuの第八化身であるクリシュナ(Krishna)に対する呼び名、あるいは抵抗不可能なもの
 
今日ロシアはNATO基地によって包囲されている。ゴルバチョフはだまされやすかったのか、それとも当てにならなかったのか。ロシア人はしきりにNATOを疑っている。
 
安保理の永久5カ国は彼ら自体が核拡散防止条約第6条に全面的に違反している。第6条は核兵器の軍事施設を取り除くことを求めている。ところが彼らは「核兵器」の性能を向上するために数兆ドルを投入している。NPT(核拡散防止条約)第6条は、真義に基づいて核兵器廃絶条約をとりまとめることを求めている。この国連条約は今年採択された。しかしロシアと中国は無視し、アメリカ、イギリス、フランスは悪意に満ちたキャンペーンをして反対した。アメリカはNPT第2条にも違反している。彼ら自身NPTに違反しているのに、安保理5カ国永久メンバーは、NPTのメンバーでさえない北朝鮮を非難する権利は絶対ない。
 
国連安保理決議2397は、国連に安定した進歩的な独立国(イラク、リビア、そして今は北朝鮮)を破壊するという伝統を運命づけられている。
 
国連決議2397の採択前に、国連人権委員会は明らかにした。北朝鮮にすでに科された厳しい制裁が、絶対必要とされる人道援助の配布を妨害している。その結果、人口の70%、1800万人の北朝鮮人が過酷な食糧不足に苦しんでいる。国際銀行取引を妨害している制裁は、国連現地活動を阻害し、食料、医薬品その他の人道援助の配布を妨げていると。
 
AFPによれば、
 
「『支援グループは、北朝鮮向け物資の税関通過に障害が生じている。補給物資の調達や輸送確保にも困っているし、4月以来160%も急上昇した食料品価格も同様に支障をきしている』と国連事務次長ミロスラフ・ジェンカは語った」とある。
 
12月9日、NBCニュース報道では、
 
「専門家によれば、トランプ政権の主な北朝鮮戦略は、北の核プログラムを抑制することはほとんどできないし、飢饉を引き起こすだけだと言う。ホワイトハウスは中国に対して、朝鮮人2500万人への石油供給を止めるように強く迫っている・・・多くの分析家は、そのような動きは北の核やミサイル計画に対してごくわずかな影響しか与えず、逆に農業部門に打撃を与え、大量飢饉にいたる可能性がある」という。
 
ノーティラス安全・持続可能性研究所上級顧問のデイビット・フォン・ヒッペル博士は、石油禁輸の結末は人道的レベルで破滅的な影響があると警告した。
 
「石油停止は、市民が入手できる国内産食料の量を劇的に減少させるだろう・・・北朝鮮の耕地はもっぱら農地である。彼らはトラクター、灌漑用ポンプ、冷蔵庫、そして収穫して腐らないように食物を輸送するトラックに頼っている・・・9月(国連決議2375)で科された現在の制裁レベルでさえ、北朝鮮の穀倉地帯を貧困に陥れるだろう。」
 
10月25日、北朝鮮の人権に関する国連特別報告者トーマス・クインタナは述べた。
 
「私が受けた報告は次のように警告していた。制裁は化学療法を受けるがん患者を妨げる・・・車いすや障害者のための必須用品がいま制限されている・・・人道援助に取り組む人々は多くの必要物資を入手したり、国際的送金をするのがますます困難になっている」と。
 
クインタナがピョンヤンから戻ると、国連の事務次長(政治担当)ジェフリー・フェルトマンは述べた。
 
「私が懸念していることは、北朝鮮のための支援計画が減少していることだった。計画は30%の資金しかない。国連が人道支援計画を行うのに大きな影響が出ている。私は全面的な資金不足を心配していた・・・現場で救命備品を配る国連の能力に影響する。」
 
この人道的災害は偶然でも同時発生でもない。彼らは北朝鮮の人々にさらに致命的な制裁を加えるこの情報は、12月22日前に安保理の15人のすべてのメンバーには公にわかっていたはずだ。安保理はこれらの犯罪の共犯者である。彼らが無責任に制裁は人道的例外措置があると自慢していても、これら「人道的例外措置」が驚くほど実施できていないことをどのように説明できるのだろう。またこれら犯罪的かつ致命的な制裁の悲劇的犠牲者が大多数の北朝鮮人民であるという事実をどう説明するのか。
 
罪深い答えが明らかになったのは、イラク制裁の場合で、「人道援助」失敗に関する調査である。それはもう一つの人道的大惨事であり、 50万人以上のイラクの子供たちが飢餓によって死んだのだ。調査ジャーナリスト、ジョイ・ゴードン『冷ややかな戦争:大量破壊兵器としての経済制裁』(2002年ハーパーから出版)という素晴らしい仕事の中で、ゴードン女史は述べている。
 
「イラクの死亡数のニュースは詳しく実証されてきた(とりわけ国連によって)。ところがメディアでは余り報道されなかった。しかし見えなくされたものは、どのように、そして誰によってそんなおびただしい死亡者数がずっと容認されてきたかという資料である・・・。しかし私がすぐわかったことは、私の質問に答えうる国連のすべての記録は公の調査から隠されてきたということだ。言うまでもないことだが国連はイラク計画に関する公的資料がないのだ。手に入れることができないものは、アメリカの政策が人道的かつ安全性判断をどのように決定するかを示す資料だ・・・イラク制裁の計画は、国連内部で多くの機関が関わっている・・・これらの機関は計画に対する不満がどのように進行しているかを公に議論されないように注意してきた・・・過去 3年にわたる外交官との調査インタビューを通して、イラク制裁行政に関する国連秘密重要資料の多くを私は手に入れた。私はこれらの資料を匿名を条件に手に入れた。彼らが示したものは、アメリカが、その国に入る人道物資を意図的に最小限にするために過去10年間攻撃的に戦ってきたということだ。そして膨大な人間的苦痛を前にしてもそうしてきた。子供の死亡率の大きな増加や広範囲に広がった伝染病などの苦痛である・・・余り知られていないのは、サダム・フセイン政府が1991年の湾岸戦争前に健康、教育、社会保障政策に過去20年間大きく資源を投入してきたことだ。イラクは無償教育、十分な電力、現代化された農業、そしてたくましい中産階級が育って急速に発展した国であった。」
 
これら北朝鮮制裁への人道的例外措置を怠ったことに不注意にも言及した外交官は、ジョイ・ゴードンによって掘り起こされた事実に通じていた。それはハーパーズから出版された。そしてこれらの外交官は「人道援助」失敗の本当の原因に気づいている。この失敗は、意図的で計画的な無垢の北朝鮮人殺害であり、殺害がこれらの制裁の目的であるが、制裁は実際には核開発計画になんら影響を及ぼさない。どの文明化された責任ある組織でも、これらの制裁を行う人たちは、計画的殺人犯として告発されるだろう。
 
北朝鮮は侵略者ではない。彼らは残忍な日本植民地主義との闘いに成功した。そして1949年アメリカの傀儡・李承晩軍によるゲリラ攻撃(北を攻撃するため38度線を侵犯した)から自らを守るべく挑発された。それは1950年〜1953年の朝鮮戦争を引き起こした挑発であった。今日アメリカ、韓国、日本は絶えざる軍事的脅威によって北朝鮮の生存を危うくしている。
 
1950年〜1953年のアメリカ主導の北朝鮮攻撃で3〜4百万人以上の北朝鮮人が絨毯爆撃やナパーム弾や細菌兵器や他の大量破壊兵器によって虐殺された。これらの数字は、アメリカのカーチス・ルメイ将軍や北朝鮮人の大虐殺に関わってきた多くの者によって確認された。そして100年以上前にトルコによる100万人のアルメニア人が虐殺された(訳注3)記憶のトラウマが、未だ今日のアルメニア人の生活の中でうずいているように、また70年前ヒトラーによるユダヤ人600万人のジェノサイドが今日のユダヤ人には忘れられないように、アメリカに指揮された国連軍による300万人以上の北朝鮮人虐殺を、北朝鮮は決して忘れることはできない。だから北朝鮮政府はこの繰り返される恐怖から北朝鮮を守る決意をしている。そして最後に残る社会主義国を完全に破壊しようとするもう一つの試みに対してアメリカを思いとどまらせる唯一の武器は核兵器であり、それはアメリカが再度の攻撃を思いとどまらせるものであるかもしれない。
    (訳注3)アルメニア人虐殺 :19世紀から20世紀初頭に、オスマン帝国の少数民族であった         アルメニア人の多くが強制移住、虐殺などにより死亡した事件
 
それ故、もう一つの虐殺手段である安保理決議2397は、人道的に破滅的な結果をもたらすとの警告にもかかわらず、北朝鮮への石油供給の90%を無慈悲にも停止するのだ。国連決議が求めることは、海外で働く15万人の北朝鮮人が追放され、24ヶ月以内に失職させられ、北朝鮮の貧困をさらに悪化させることだ。国連決議2397は、その他に共和国の経済分野にとって決定的な個人に対する多数の旅行禁止と共に、15人の経済分野の要員や貿易代表のさらなる渡航禁止を含んでいる。
 
韓大成(ハン テ ソン)大使はジュネーブの軍縮会議で次のように述べた。
 
「制裁の目的が、我が国の体制転覆をすることであることは明らかである。アメリカとその追随国家によって主張されているような兵器開発を妨げることでなく、国を分断し抑圧することによって、人道的な災害を意図的にもたらすことである。」
 
12月7日に韓国は、金正恩殺害の「斬首計画」のためドローンやグレネード・マシーンガン(自動擲弾銃)購入でほぼ10億ドルを費やすと報道された。もちろんこれは犯罪的殺人であるのみならず、国際法違反である。12月10日ロイター通信の報道では、日本とアメリカと韓国はさらに追加の軍事演習を行う予定だという。その前の週に行われた12月4日の大規模な米韓軍事演習に続いてすぐだ。これは北朝鮮人民や政府の生存への絶え間ない軍事的脅威であり、我慢ならない挑発だ。12月17日、韓国と米軍は北朝鮮進入合同軍事計画を、表面的には大量破壊兵器を廃棄させるためと言って実施した。この「兵士の攻撃」軍事演習は、38度線近くのソウルの北、スタンレー基地で行われた。韓国地域軍アメリカ司令官ビンセント・ブルックスとトーマス・バンダル中将も「雄者の攻撃」軍事演習に参加していた。
 
11月28日までに北朝鮮政府は、ほぼ3ヶ月間なんら核やミサイルのテストをしなかった。すべての安保理決議で求められたこの安定した雰囲気で平和的な交渉を試みる代わりに、逆にアメリカは一連の執念深い軍事訓練をして、北朝鮮に対する軍事的脅威をエスカレートさせた。それ故、米国務長官レックス・ティラーソンが12月15日、北朝鮮は交渉する権利を「勝ち取ら」ねばならないと表明したことはまったく不合理なことである。北朝鮮はほぼ3ヶ月前からどんなテストも停止させてきた。ところが平和交渉を打ち立てる機会をつかむどころか、アメリカは攻撃的に軍事的脅威を増加させたのだ。
 
北朝鮮外務省は、トランプ米国大統領の国家安全保障戦略をこう呼んだ。
 
「我が国を抑圧しようとして、朝鮮半島全体をアメリカ覇権の前線基地に変えようとするもっとも最近のアメリカ政策であると。トランプは全世界を従属させようとしている」と。
 
国連安保理決議2397は、北朝鮮経済にとって致命的なものとなるだろう。それは大多数の人々を破滅させるが、兵器開発にはほとんど何んの影響もない。
 
最後に12月4日、国連総会は「新しいタイプの大量破壊兵器の開発や製造そして大量破壊兵器の新しい組織網を禁止」する決議を採択した(軍縮会議報告)。北朝鮮は決議を支持して「賛成」投票をした。ところがアメリカは賛成せず「反対」投票をした。また「軍備縮小・不拡散地域における多国間主義の促進」に関して北朝鮮は決議を支持して「賛成」投票をしたが、アメリカは支持せず「反対」投票をした。どちらの国が世界平和にとって脅威であるかは明らかである。それは北朝鮮ではない。
 
今日、ニューヨークは凍るほど寒い。もしアメリカに90%の石油削減が科されたら、おびただしい数の市民が凍え死ぬだろう。北朝鮮の冬はさらに寒い。国連決議2397は北朝鮮人民に耐えがたい死を宣告するだろう。皮肉なことに12月22日は国連の「ホロコースト記念日」である。恥ずべきことに12月22日国連安保理は、21世紀のホロコーストを北朝鮮の人々に科す投票をしたのだ。国連決議2397の可決で、国連安保理はバーバリズムやテロの道具と化したのだ。
 
Carla Steaは、ニューヨーク国連本部のグローバル・リサーチの通信員
 
画像はゾビエンTVより
 
この記事の元原稿はグローバル・リサーチによる。
 
<記事原文>
https://www.globalresearch.ca/day-of-infamy-for-the-un-security-council-triggering-a-devastating-humanitarian-crisis-in-north-korea/5624185                    
 
<新見コメント>
Carla Stea「国連安保理の不名誉な日」を翻訳しました。
これまで北朝鮮のミサイル、核実験を期にアメリカを中心として北朝鮮制裁、軍事的圧力が強化されてきました。しかしそれは1994年の米・朝和平合意を反故にされ、「悪の枢軸」指定を受けた北朝鮮が国家の生き残りをかけて、ミサイル、核実験に踏み切ってきた過程を追ってきました。
 
しかし今回は安保理決議2397による経済制裁が、どのように北朝鮮人民を苦しめるかを扱った論文です。石油の90%を遮断され、「人口の70%1800万人が過酷な食糧不足に苦しんでいる。国連による銀行取引停止は、国連現地支援活動をも阻害し、食料、医薬品その他の人道援助の配布を妨げている」と国連人権委員会は明らかにしている。
 
このような制裁が無実の住民を苦しめる例は、イラク戦争時の制裁を対比させることによって一層その惨状が明らかにされている。「50万に以上のイラクの子供たちが飢餓によって死んだのだ」と。「サダム・フセイン政府が1991年の湾岸戦争前に健康、教育、社会保障政策に過去20年間大きく資源を投入してきたことだ。イラクは無償教育、十分な電力、現代化された農業、そしてたくましい中産階級が育って急速に発展した国であった」のにである。
 
もう一つこの記事では書かれていないが、現在の経済制裁の典型例として、サウジアラビアによるイェメン制裁を挙げておく必要がある。
   イエメン・ミサイルは、サウジアラビアで誰一人殺害していないが、アメリカ製の   爆弾とミサイルで、サウジアラビアが何万人ものイエメン人一般市民を殺害してい   ることを、ヘイリー(国連大使)は、指摘するのを怠った。イエメンを経済封鎖し   て、極めて大規模な飢饉を引き起こしているのは、サウジアラビアだ。最近、サウ   ジアラビアは封鎖を解除したと主張しているが、米国国際開発庁すら、経済封鎖が   変わった兆しは皆無だと言っている。イエメンでは毎日何百人もの人々が食料や単   純な医薬品の欠如で亡くなっている。
     Moon of Alabama「ヘイリー大使、イエメン・ミサイルの証拠を挙げる説明に     失敗、サウジアラビア戦争犯罪を無視」2017年12月19日 (火)「マスコミに     載らない海外記事」より
      http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-a098.html
 
このように戦争が起きているところでも、いまだ戦争になっていないところでも、経済制裁がいかに一般市民を死に至らしめていることを忘れてはならない。この安保理決議に対して防波堤となるべき中国、ロシアまで賛成してしまったことは、事態の一層の悪化が懸念される。
 
そして制裁は、戦争に至らないための手段という考えが間違っていることがわかった。実弾は飛んでいないが、死に至らしめる舞台裏の戦争はどんどん進められているのだ。だからこそ、圧力によるのではなく、外交による解決が早急に求められているのだ。